発疹の出る病気
発疹とは、体の表面にあらわれた目で見える変化の総称です。
子供の病気には、発疹のみられるものがたくさんあります。その原因には、はしか・風疹・突発性発疹・水ぼうそうなどの「うつる病気」とじんま疹やアトピー性皮膚炎などのアレルギーによるもの、出血斑などの血液の病気によるものなどに区別できます。
これらを診断するための重要な手がかりは「発熱」です。ウイルスや細菌による「うつる病気」の発疹は、熱があるのが普通ですが、アレルギーによるものは発熱はみられません。さらに「うつる病気」をくわしく知るためには、発熱が発疹より先か後か、あるいはほぼ同時に出たのかなど、熱と発疹の時間的関係をたしかめることが大切です。
たとえば、はしかでは熱が3〜4日ほどつづいた後に発疹が出ます。風疹の発疹は発熱と同時にあらわれますが、突発性発疹では熱が下がると同時に発疹が出る特徴があり、熱をこまめにはかることが大事です。ただ、発疹から原因となる病気を判断するには専門的知識が必要です。このため、発疹が出たら医師に経過をみてもらうのが賢明です。
はしか(麻疹)
はしか(麻疹)は子供にとって重い病気です。
はしかは、せきやくしゃみで空中に飛び散ったはしかウイルスが体に侵入して発病します。10日間の潜伏期の後、高熱とともに、せき・くしゃみ・鼻みず・目の充血などかぜに似た症状が2〜3日続きます。
このカタル症状の終わりごろ、口内のほほの粘膜にコプリック斑と呼ばれる白い斑点ができ、これが早期診断の決め手となります。カタル症状のあと、熱は少し下がりますがふたたび高熱となり、首・顔・胸に小さな発疹があらわれやがて全身に広がります。
発疹が出て3〜4日には、39〜40度の熱がつづき、肺炎などの合併症がおこりやすく、一番つらい時期です。この時期を過ぎれば熱が下がり発疹のあとはしばらく黒ずんだ色素沈着を残しますが、はしかは終わります。
はしかは、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症をおこしやすい恐ろしい病気です。このため予防が必要です。はしかワクチンを受けると、ほとんどの子供は、一生はしかにかかりません。お誕生を過ぎたら早めにワクチンを受けましょう。
風疹(三日ばしか)
風疹は、はしかによく似た病気ですが、その症状は軽く発疹や発熱は三日ほどでなくなるので、三日ばしかともよばれています。
しかし、風疹は、はしかの軽症型ではなく、風疹ウイルスに感染して発病する、はしかとは違う別の病気です。潜伏期は14〜21日。38度ぐらいの発熱とともにピンク色の発疹が全身に現れます。
このように発熱と発疹が同時におこるのが風疹の特徴です。発疹の出る少し前に、耳のうしろや首のリンパ節がはれてグリグリができたり、目が充血したり、のどが赤くはれて痛いこともあります。発病から3日ほどで熱も下がり、発疹もきれいに消えてしまうので、子供にとって風疹は軽い病気と言えるでしょう。
ただし、まれに血小板減少性紫斑病や脳炎などの合併症を起こすこともありますし、大人がかかるとたいへん重くなります。風疹がなによりこわいのは、妊娠4ヶ月までのお母さんがかかると、心臓や脳や目などに病気をもった先天性風疹症候群の子供が生まれる危険性があることです。予防には、風疹ワクチンが有効ですので予防接種を受けましょう。
突発性発疹
生後5ヶ月から1歳ぐらいまでの赤ちゃんがよくかかります。生まれて初めて高い熱を出すのがこの病気で、子供が小さく育児に慣れないお母さんをはらはらさせます。
原因は、ヘルペスウイルス6型です。突然38〜40度ぐらいの熱がでます。高熱は3日続きますが、熱の高いわりに元気がよいのが特徴です。熱が下がるとその日のうちに細かい発疹が体全体にあらわれ、3〜4日後には自然に消えます。熱が下がり発疹が出ると、この病気の診断もつくので親もはじめて安心します。
しかし熱のある時、親をびっくりさせるのが熱性ケイレンです。熱性ケイレンは、熱が急に高くなるときに起こり、ケイレンは数分でおさまり、あとは元気になります。突発性発疹は、いまのところワクチンもなく予防することはできませんが、あまり大騒ぎする病気ではありません。大切なことは、熱のわりには顔つきもよいので、あわてないことです。
水ぼうそう(水痘)
水ぼうそう(水痘)は、伝染力が強くかゆみも伴うため不機嫌になるので、子供にとっていやな病気と言えます。
水ぼうそうは、帯状疱疹と同じウイルスの感染によって起こります。潜伏期は14日間ぐらいで、ほとんどが虫刺されに似た発疹に気づくことから病気がはじまります。発熱は38度くらいまでで、最初の2〜3日つづきますが熱の出ない子供もいます。小さな赤いかゆみのある発疹が最初に胸、背中、おなかなどにパラパラ出て、しだいに全身に広がり口の中、目のふち、陰部などにもできます。発疹の数が急にふえるとともに、中心に水をもった水疱に変わりやがて乾燥して黒いかさぶたになります。発疹が出て3〜5日は、赤い発疹・水疱・かさぶたがまじりあいます。これが水ぼうそうの特徴です。
すべてがかさぶたになり治るまで約1週間かかります。治療はかゆみ止めだけで特効薬はありませんが、かきこわして皮膚を化膿させたときは注意が必要です。現在、水痘ワクチンが任意予防接種として希望者に実施されています。
手足口病
夏から秋にかけて、1歳から4歳ぐらいの乳幼児によくみられる病気です。
手足口病は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどの感染によっておこる夏かぜの一種です。3〜4日の潜伏期のあと、その名の示すとおり手のひら、足のうら、口の中に水疱ができます。水疱はよく注意してみると、ひざやおしりにもできますが、全身にくまなく広がることはありません。
熱の出ることも少なく軽い病気と言えますが、口の中に痛みがあるあいだは、やわらかい口当たりのいいものを食べさせ、水分を十分取るよう心がけます。
りんご病(伝染性紅斑)
この病気にかかると、顔がりんごのように赤くなることから、りんご病とかりんごほっぺ病と呼ばれています。
りんご病は古くからありましたが、その原因がヒトパルボウイルスとわかったのは最近のことです。このウイルスに感染すると発熱、のどの痛み、寒気、筋肉痛、だるさなどのかぜに似た症状が数日間あります。そして、りんご病特有の紅斑つまり、顔の喋喋形の赤い斑点や、手や足のじん麻疹に似たぶつぶつに気がつきます。
一般的に心配ない病気と考えられておりますが、脳炎とか、妊婦さんには流産の危険もあるので、発熱や紅斑の出ている時は自宅で安静にすることをすすめます。
溶連菌感染症
溶連菌とは溶血性連鎖球菌の略で、A・B・C・Dなどのいくつかのタイプがあります。この中で主に問題となるのは、A群溶連菌です。
この病気にかかりやすいのは3歳以上の幼児、学童で、しばしば集団的に発病します。潜伏期は2〜3日で、高熱、寒気、頭痛、のどの痛みなどを伴って発病し、ほぼ同時に全身に真っ赤な粟粒のような発疹が出ます。
この発疹は溶連菌の毒素によるもので、以前はしょう紅熱といい、法定伝染病として取り扱われておりましたが、抗生物質がよく効くことで軽症化してきたことにより最近では溶連菌感染症と扱われるようになりました。この溶連菌は咽頭炎や皮膚の感染症をおこすことが多いので早めに抗生物質を与えることが大切です。投与している期間が短すぎたりすると腎炎やリュウマチ熱を後に併発することがあります。このため溶連菌感染症と診断されたら、熱が下がってもさらに10日間ぐらいは薬を飲み続ける必要があります。発病後数週間は腎炎を警戒し、尿のたんぱく・血尿などをしらべることも大切ですし、兄弟などの感染予防にペニシリンを三日間服用することも忘れてはなりません。
学校伝染病
学校伝染病とは、子供の集団に流行しないよう予防が必要な病気のことです。
現在の学校伝染病は3種に分類されています。第1類はこれらなどの法定伝染病。第2類はインフルエンザ・はしか・風疹・水ぼうそうなど9種類。第3類には結核のほか「その他の伝染病」があります。「その他の伝染病」には手足口病・りんご病・溶連菌感染症などが考えられ、これらの学校伝染病に指定されている病気にかかった後、登園・登校する際には、かかりつけの医師などの判断が必要となります。