インフルエンザ予防接種の副反応の種類と発生確率
インフルエンザの予防接種を受ける前に、副反応について不安を感じている方は少なくありません。特に「重い副反応があるのでは」と心配になる方もいるかもしれませんが、実際には重篤な副反応が報告されるケースはごくまれとされています。副反応の多くは軽度な症状であり、一定期間内に自然に改善する傾向があります。
本記事では、厚生労働省などの公的機関が公表している情報をもとに、インフルエンザワクチン接種後に起こりうる副反応の種類や、これまでに報告されている頻度についてご紹介します。
予防接種を受ける前に、こうした情報を把握しておくことは、判断材料の一つとして役立ち、正確な情報を知ることで、過度な不安を感じにくくなります。接種を希望される場合は、医師の説明をしっかり受け、ご自身の健康状態に応じてご判断ください。
インフルエンザ予防接種で見られる副反応の種類と発生確率
予防接種後にみられる反応には、比較的よく見られる軽度なものから、非常にまれに報告される重い症状まで、幅広い種類があります。一般的には、接種部位の痛みや腫れ、赤みなどの局所反応、あるいは発熱や倦怠感といった全身症状が比較的多く報告されており、いずれも一過性で自然におさまるケースがほとんどとされています。
厚生労働省をはじめとする公的機関では、これまでの接種実績に基づいた副反応に関するデータを公表しており、発生頻度や症状の内容についての情報を確認することができます。なお、報告されている頻度はあくまで統計的な傾向を示すものであり、すべての人に当てはまるわけではなく、症状の出方には個人差があります。
具体的にどのような症状があるのか、詳しく見ていきましょう。
注射部位の腫れや痛み(10〜20%の方に発症)
インフルエンザワクチン接種後に最も頻繁に見られる副反応が、注射部位の局所反応です。厚生労働省の公式データによると、接種を受けた方の10〜20%に注射部位の赤み、腫れ、痛みなどが見られたという報告があります。
これらの症状は、接種されたワクチンに対して体が反応する過程で起こるもので、一般的には一時的な現象とされています。接種当日から翌日にかけて症状が現れ、通常は2〜3日程度で自然におさまります。症状の程度は個人差がありますが、多くの場合は軽度から中等度の痛みや腫れにとどまり、日常生活に大きな支障をきたすほど重篤になることは稀です。
ただし、症状が強く出る場合や、腫れが肘より広範囲に広がる、4日以上たっても改善しないといったケースでは、念のため医師に相談することが推奨されています。
発熱や頭痛などの全身症状(5〜10%の方に発症)
インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の局所的な反応に加えて、全身に関連する症状が報告されることもあります。厚生労働省のデータによると、接種を受けた方の約5〜10%で、発熱や頭痛、悪寒、倦怠感といった全身症状が見られたケースがあるとされています。
これらの症状は、体内の免疫反応が一時的に活性化されることによってあらわれると考えられており、ワクチンの接種による一般的な体の反応のひとつと捉えられています。あらわれ方や症状の程度には個人差がありますが、比較的軽い症状にとどまる場合が多いとされます。
発熱に関しては、37〜38度程度の微熱が報告されることが多く、まれに38度を超えることもあるようです。頭痛や倦怠感も含めて、これらの症状は接種から24時間以内に現れることが多く、局所症状と同様に2〜3日程度で改善していきます。
症状が現れた際は、十分な休息と水分補給を心がけることが大切です。ただし、38度以上の高熱が続く場合や、症状が5日以上続く場合などは、医療機関への受診を検討してください。
アナフィラキシーなど重篤な副反応(発症は極めてまれ)
インフルエンザワクチン接種において最も注意を要するのが、アナフィラキシーに代表される重篤な副反応です。厚生労働省の報告によると、これらの重篤な反応が確認される頻度は非常に低く、極めてまれであるとされています。
アナフィラキシーは、ワクチン成分に対する急激なアレルギー反応で、接種後30分以内に症状が現れることが特徴的です。具体的な症状としては、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害などがあり、迅速な医療対応が必要な状態となります。
その他の重篤な副反応として、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎なども報告されていますが、いずれも発生頻度は極めて低く、ワクチン接種との明確な因果関係が必ずしも証明されているわけではありません。
重篤な副反応が起こる可能性は非常にまれですが、万が一に備えて、多くの医療機関では接種後に院内で30分程度の待機を推奨しており、緊急時に備えた医療体制が整備されています。また、接種前には問診票などを通じて、過去のアレルギー歴や基礎疾患の有無を確認し、体調に応じた適切な対応がとられています。
副作用と副反応の違いについて
医療情報を正しく理解するうえで知っておきたいのが、「副作用」と「副反応」という言葉の違いです。一般的には同じような意味で使われることが多いですが、医学的には明確な区別があります。
「副作用」は、ワクチン以外の医薬品に対して使われる言葉で、薬の本来の効果以外に起こる、好ましくない作用を指すものです。一方、「副反応」は主にワクチン接種に関連する反応を示す言葉で、ワクチンによる免疫付与以外の反応が起きた場合に使用されます。
厚生労働省でも、予防接種に関する資料では「副反応」という用語を用いており、ワクチンに特有の考え方として整理されています。こうした用語の違いを知っておくことで、医療情報をより正確に理解する助けとなるでしょう。
インターネットで情報を検索する際も、「インフルエンザワクチン 副反応」というキーワードを使用することで、より専門的で信頼性の高い情報にアクセスしやすくなります。
また、医療機関で相談する際や、公的な資料を読む場面でも、こうした用語の違いを意識することで、内容の意味をより的確に捉えやすくなります。医療に関する正確な理解を深めるためにも、用語の使われ方に注意することがひとつのポイントとなります。
インフルエンザ予防接種の副反応が現れる時期と持続期間
インフルエンザワクチンを接種したあと、「いつ頃から副反応が現れるのか」「どのくらいの期間続くのか」といった点が気になる方も多いのではないでしょうか。副反応が出やすい時期や、その持続期間の目安を知っておくことは、適切な体調管理と早期対応において重要です。
医学的な研究によると、インフルエンザワクチンによる副反応は、そのほとんどが接種後24時間以内に現れるとされています。特に重篤なアレルギー反応については、接種後30分以内の観察が医療機関で義務付けられているのも、この時間帯のリスクが高いためです。
一方、注射部位の腫れや発熱、倦怠感などの比較的よくみられる反応については、通常2〜3日程度で自然におさまることが多いとされています。ただし、体調の変化には個人差があるため、一概にすべてのケースに当てはまるわけではありません。
ここでは、副反応の種類ごとにあらわれやすい時期について、もう少し詳しく見ていきます。
接種後30分以内に注意すべき症状
ワクチン接種後、最初の30分間は、体調の変化に特に注意を払う時間帯です。厚生労働省では、アナフィラキシーのような急性のアレルギー反応は、接種直後から比較的早い段階でみられることがあるため、多くの医療機関ではこの間の院内待機が推奨されています。
アナフィラキシーは、急激に進行する全身性のアレルギー反応で、数分から数十分以内に症状が現れるケースも報告されています。皮膚のかゆみや発疹、蕁麻疹、息苦しさ、血圧の低下、ふらつきなどが代表的な症状とされており、体調の急な変化には注意が必要です。
この観察期間中、医療機関では血圧や呼吸の状態、皮膚の様子などを確認しながら、万が一異常がみられた場合には、速やかに適切な対応が取れる体制が整えられています。必要に応じて、医師の判断のもとでアドレナリン製剤の使用や酸素吸入などの処置が行われる場合もあります。
接種後は、患者自身も体調の変化に意識を向け、少しでも異変を感じた場合には、遠慮なく医療スタッフに伝えることが大切です。特に、息苦しさ、ふらつき、全身のかゆみなどがあった際には、早めに申し出るようにしましょう。
接種後24時間以内に多く見られる症状
インフルエンザワクチンの副反応として最も頻度が高いのが、接種後24時間以内に現れる注射部位の局所反応と全身症状です。厚生労働省の調査によると、副反応の多くがこの時間帯に集中して発現することが確認されています。
注射部位の局所症状では、赤み、腫れ、痛みが現れます。これらは体の免疫がワクチンに反応しているサインの一つであり、通常は数日以内に軽快するとされています。
全身症状については、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感などが現れることがあります。これらの症状も、免疫システムがワクチン成分を認識し、抗体産生や免疫記憶の形成過程で生じる生理的反応です。特に発熱は、免疫細胞の活動が活発化している証拠でもあります。
ワクチン接種後24時間以内は、激しい運動や飲酒を控え、十分な休息を取ることが推奨されています。また、注射部位を強くこすらず、清潔に保つことも大切です。もし体調に変化があった場合は、無理をせず安静に過ごし、必要に応じて医療機関に相談してください。
副反応が続く期間と軽快する目安
厚生労働省が公表している情報によれば、注射部位の腫れや痛みなどの局所的な反応、および発熱や倦怠感などの全身症状は、通常2〜3日以内におさまることが多いとされています。
注射部位の赤みや腫れは、接種翌日にやや強く感じる場合がありますが、徐々に軽くなっていくのが一般的な経過です。多くの場合、接種から3日目以降には症状が目立たなくなり、1週間ほどでほぼ消失します。発熱や倦怠感といった全身の症状も、これと同様の回復パターンをたどることが多いようです。ただし、回復のスピードには個人差があります。
もしも、接種後4日以上たっても腫れや痛みが強く残っている場合や、38度以上の発熱が続いている場合には、念のため医療機関への相談を検討することが推奨されます。細菌感染の合併など、ワクチン接種とは別の原因が関与している可能性もあるためです。
体調の変化を見分けるポイントは、症状の強さと持続期間にあります。比較的軽度の症状で、時間の経過とともに改善しているようであれば、特別な対応が不要なことも多いですが、いつもと異なる体調変化や不安を感じる場合には、早めに医師へ相談することが安心につながります。
インフルエンザ予防接種後の過ごし方と副反応への対処法
インフルエンザ予防接種を受けたあとは、どのように過ごすのがよいか迷う方も少なくありません。接種後の過ごし方にはいくつかの注意点があり、体調を整えるために意識しておきたいポイントがあります。
ここでは、接種当日およびその後数日間の過ごし方について、注意しておきたい点や体調が変化した際の対処のしかたをわかりやすくまとめています。どんなときに様子を見るべきか、また医療機関に相談すべきタイミングなども含めて紹介しています。
接種当日の入浴や運動に関する注意点
インフルエンザ予防接種を受けた当日は、体調の変化に気を配りながら、無理のない過ごし方を心がけることが大切です。入浴や運動に関しても、いくつかのポイントを意識することで、体調を安定させやすくなります。
入浴についてですが、接種後1時間以上が経過し、特に体調に変化が見られない場合であれば、基本的には差し支えないとされています。ただし、注射を受けた部位を強くこすったり、刺激を与えたりしないよう注意が必要です。
また、長時間の入浴や熱すぎるお湯は体に負担をかけることがあるため、ぬるめのお湯で短時間の入浴を心がけるとよいでしょう。もし発熱や強い倦怠感などがある場合は、無理に入浴せず、安静に過ごすことが望まれます。
運動についてですが、接種後24時間以内は、体への負荷が大きい激しい運動は避けたほうがよいとされています。たとえば、水泳、ランニング、球技、筋トレなどは、接種当日は控えるようにしましょう。
一方で、軽いウォーキングや階段の昇り降り、短時間の自転車移動など、日常生活の範囲での動きについては、体調に問題がなければ無理のない範囲で行っても差し支えない場合が多いとされています。
体の反応には個人差があるため、接種当日は無理をせず、体調の変化に注意を払いながら、安静を優先して過ごすことがすすめられています。少しでも違和感や異変を感じた場合は、早めに休息をとるようにしましょう。
注射部位の腫れや痛みへの対応方法
注射部に腫れや痛みが出ている場合の対処法としては、冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んでやさしく当てると、腫れや不快感の緩和につながる可能性があります。ただし、氷を直接肌に当てるのは刺激が強すぎる場合があるため避けましょう。
また、症状が出ている間は、接種した部分を強くこすったり、引っかいたりしないよう注意が必要です。入浴時には、ボディタオルでゴシゴシと洗うのではなく、ぬるま湯でやさしく洗い流す程度にとどめるのが望ましいとされています。
腫れが接種部位を超えて広がる場合や、痛みが我慢できないほど強くなった場合、4日以上症状が続く場合は医療機関を受診してください。市販の解熱鎮痛剤の使用については、事前に医師に相談することをおすすめします。
発熱や倦怠感が現れた場合の過ごし方
発熱や倦怠感などの全身症状がある場合は、無理をせずにゆっくりと休むことが大切です。発熱時には体内の水分が失われやすくなるため、食欲がない場合でもこまめに水分をとることが望まれます。水やお茶、経口補水液などを活用し、脱水を予防しましょう。
市販の解熱鎮痛薬を使用したいと感じた場合は、医師や薬剤師に相談のうえ、用法・用量を守って正しく使用するようにしてください。とくに、発熱が38度以上ある状態が長引いたり、呼吸が苦しく感じられたり、頭痛が強くなるなどの症状がある場合には、早めに医療機関で相談することがすすめられます。
仕事や学校については、症状がある間は無理に出勤・登校せず、体調の回復を優先させることが推奨されます。周囲の方へは、ワクチン接種後に一時的な体調変化が見られることがある旨を伝えておくと、理解が得やすくなるかもしれません。
飲酒や食事で気をつけるべきこと
飲酒に関しては、接種当日から数日間は控えめにすることが望ましいとされています。とくに大量の飲酒は、体調の変化を見過ごしてしまう可能性があるほか、体への負担が大きくなることも考えられます。体質や年齢によってアルコールの影響が異なるため、高齢の方やアルコールに弱い体質の方は、より慎重な対応が求められる場面もあります。
一方で、食事については特別な制限はありません。通常通りの食事で差し支えありませんが、体調がすぐれない場合には、消化の良いものを選び、少量ずつ摂るなど、無理のない範囲で栄養を補うことが大切です。栄養バランスの取れた食事や十分な水分補給は、体調を整える上で役立ちます。
また、水分不足にならないよう、こまめな水分摂取を意識することも重要です。脱水症状を防ぐためにも、水やお茶、スープなどを取り入れて、体に負担をかけずに過ごすよう心がけましょう。
接種後の体調変化には個人差がありますが、飲酒や食事について適切な配慮をすることで、より快適に過ごせる可能性が高まります。自身の体調をよく観察しながら、無理のない過ごし方を意識してみてください。
年齢別の副反応の特徴と相談先
予防接種後の体調変化(副反応)は、年齢によってあらわれ方や注意点が異なることがあります。
ここでは、子ども・成人・高齢者のそれぞれの特徴と、困ったときの相談先を整理します。
成人のインフルエンザ予防接種副反応の特徴
成人(13~64歳)インフルエンザ予防接種を受けた際に見られる体調の変化には、いくつかの傾向があります。最も多く報告されているのは、接種部位に現れる赤みや腫れ、痛みといった局所的な反応です。また、発熱や頭痛、倦怠感などの全身症状が見られることもあります。
成人の場合、自身の体調の変化を言葉で適切に伝えやすいため、症状の把握が比較的容易です。ただし、軽度の発熱やだるさなどを「よくある反応」として見過ごしてしまうケースもあります。
日常生活への影響をできるだけ抑えるためには、予防接種を受ける時期を工夫することも一つの方法です。例えば、週末や祝日の前日に接種を予定すれば、万が一体調に変化があっても休養を取りやすくなります。
また、接種当日は激しい運動や長時間の入浴、大量の飲酒などは避け、なるべく安静に過ごすことが望ましいとされています。飲酒については明確に禁止されているわけではありませんが、接種後2〜3日は控えめにしておく方が安心です。
さらに、過去にワクチンや薬に対してアレルギー反応を起こした経験がある方は、予防接種の前に必ず医師にその旨を伝えてください。問診の段階でこうした情報が共有されていれば、より適切な対応が可能となります。
子どもの副反応で保護者が観察すべきポイント
小児(13歳未満)の副反応は、成人と似た症状がでることが多いですが、言葉で自分の状態をうまく伝えられないため、保護者の細やかな観察がとても重要です。特にこの年齢では2回の接種が推奨されているため、1回目で副反応があった場合は、2回目の接種時ではより慎重に対応することが求められます。
接種後は、最初の30分間を特に注意して見守る必要があります。この間に呼吸が苦しそうでないか、顔色がいつもと違わないか、ぐったりしていないか、普段と違う泣き方や様子がないかを確認しましょう。注射をした部分もチェックし、腫れや熱感、強いかゆみなどの異常がないか気を配ることが大切です。
症状があらわれた場合に備え、体温や接種部位の状態、食欲や睡眠の変化を時間とともに記録しておくと医療機関での相談時に役立ちます。子どもが「痛い」「しんどい」と伝えたときには、その言葉の裏にある具体的な症状をできるだけ詳しく聞き出し、医師に正確に伝えられるようにしましょう。
また、接種後は激しい遊びを控えさせ、長時間の入浴も避けることが望ましいです。注射部位をかいたり強くこすったりしないよう注意し、子どもの体調をしっかりと見守ってあげることが安心して予防接種を受けるためのポイントとなります。
高齢者が気をつけたい副反応のリスク
高齢者の場合、加齢に伴う免疫機能の変化から、副反応の現れ方が若い人と多少異なることがあります。副反応そのものの発生頻度に大きな違いはないものの、心臓や腎臓、肝臓、呼吸器などの基礎疾患を持っているケースが多く、副反応によってこれらの病状が悪化するリスクがある点が特に注意すべきポイントです。
また、高齢者は複数の薬を常用していることも多いため、ワクチン接種による副反応と薬物の相互作用が起きる可能性もあります。接種前には主治医に現在の体調や服薬状況をしっかり伝え、リスクを十分に把握したうえで接種を受けることが重要です。
さらに、介護者や家族が普段の様子と比べてわずかな変化にも気を配ることが不可欠です。食欲の低下や会話への反応の鈍化、歩き方の不安定さ、顔色の変化など、日常生活の中での微妙な違いを見逃さないようにしましょう。認知症の方の場合、自分で症状を訴えにくいため、特に注意深く観察する必要があります。
体調に普段と異なる変化が見られた際には、迷わず医療機関に相談し、早期に適切な対応をとることが高齢者の安全を守るうえで非常に大切です。
緊急受診が必要な症状の見分け方
インフルエンザ予防接種後に現れる可能性がある重篤な症状には、即座に医療機関を受診すべきものがあります。なかでも最も注意が必要なのがアナフィラキシーショックです。
これはワクチン成分に対する急性アレルギー反応であり、接種後30分以内に 発症することが多く、命に関わる可能性があります。以下のような症状が出た場合は、ためらわず救急車を呼んでください。
- 皮膚の症状:蕁麻疹、湿疹、かゆみ、腫れ
- 消化器症状:腹痛、嘔吐、下痢
- 呼吸器症状:息苦しさ、呼吸困難
- 全身症状:めまい、立ちくらみ、血圧低下、意識障害、手足のしびれ、けいれん
また、接種後数日~2週間以内 に現れることがある神経系の重篤な副反応として、以下のような症状にも注意が必要です。
- ギラン・バレー症候群:手足のしびれや脱力、歩行困難
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):激しい頭痛、発熱、けいれん、意識障害
- その他、急激な視力障害や構音障害(ろれつが回らない)など
緊急受診が必要かどうかの判断基準としては、以下の点を確認してください。
- 症状が急激に進行しているか
- 呼吸困難や脈の異常、意識の変化があるか
- 高熱を伴う神経症状(けいれん、錯乱、意識障害など)があるか
受診先については、アナフィラキシーのように急を要する症状は 救急外来(または119番通報)を、比較的緊急性の低い症状(長引くしびれや体調不良など)は 一般外来やかかりつけ医 への相談が適切です。
受診や連絡時には、以下の情報を正確に伝えましょう。
- ワクチンの接種日時
- ワクチンの種類(インフルエンザワクチン)
- 症状の内容と出現時間
- 既往歴(アレルギー歴、持病など)
- 現在服用している薬
これらの情報が、迅速かつ正確な診断と処置につながります。少しでも異変を感じたら、迷わず専門家に相談してください。
副反応で困った際の相談先と救済制度
インフルエンザワクチン接種後に副反応で困った場合、医療機関以外にも相談できる公的な窓口や救済制度が整備されています。
厚生労働省の「感染症・予防接種相談窓口」
電話:0120-995-956
受付時間:平日9時~17時、土日祝休み
ワクチン接種後に現れた副反応に関する相談が可能です。症状の内容に応じて、医師に相談すべきか、自宅でのケアで様子を見るべきかなど、適切な判断をサポートしてくれます。
予防接種健康被害救済制度・医薬品副作用被害救済制度
副反応が長引いたり、医療機関での治療が必要になったりした場合には、予防接種健康被害救済制度の利用を検討しましょう。これは、定期接種(インフルエンザ予防接種が含まれる場合あり)により健康被害が生じた際に、国が医療費や障害年金などを補償する制度です。
一方、任意接種での健康被害に対しては、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による「医薬品副作用被害救済制度」が適用されます。
これらの制度では、以下のような給付を受けられる可能性があります。
- 医療費・医療手当(自己負担分の補助)
- 障害年金
- 障害児養育年金
- 葬祭料・死亡一時金(死亡した場合)など
申請の際には、次のような書類を準備する必要があります。状況によって必要となる書類が異なります。
- 予防接種の記録(接種券や母子手帳など)
- 診療録(カルテ)、診断書
- 医療機関の領収書や明細、など
手続きの窓口は、接種時の住所地の市区町村となっており、申請から認定・給付までには通常4か月~1年程度かかるとされています。スムーズな対応のためには、体調変化の経緯を時系列でメモしておくとよいでしょう。
困ったときは、「自己判断せず、早めに相談・申請」することが、健康を守るうえでも精神的な安心にもつながります。
参照元:感染症・予防接種相談窓口|厚生労働省 / 予防接種健康被害救済制度について|厚生労働省 / 医薬品副作用被害救済制度|PMDA