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コラム

インフルエンザの予防接種後の運動はなぜダメ?

インフルエンザ予防接種を受けた後は、激しい運動を控えることが推奨されています。

接種直後にジョギングや筋トレなどを行うと、体調によっては接種部位の腫れや発熱などが起こる場合があります。一般的には、接種後24〜48時間は体に無理をかけないよう過ごすのが望ましいとされています。

この記事では、予防接種後に運動を控える理由や、自宅でできる穏やかな過ごし方について解説します。正しい知識を身につけることで、体への負担を減らし、安心して接種を受けられるようになります。

日頃から運動を習慣にしている方や、初めて接種を受ける方は、事前にチェックしておくと安心です。

インフルエンザ予防接種後に運動を控える理由と期間

インフルエンザ予防接種を受けた後、運動はいつから再開してよいのでしょうか。とくに部活動や習い事のスポーツがある方にとって、運動制限は気になる点です。

実際、接種後すぐに激しい運動を行うと、体調に影響が出る可能性があるため、一定の休養期間が推奨されることがあります。

適切な知識を持って行動することで、体への負担を減らし、安心して予防接種後を過ごすことにつながります。ここでは、控えるべき運動の種類や目安となる期間について解説します。

予防接種後24時間は激しい運動を避ける必要性

インフルエンザワクチンを接種した後の24時間以内は、激しい運動を控えることがすすめられています。この時間帯は、接種による身体の反応が出やすいとされるため、運動によって体に負担がかかると、接種後の体調の変化が強く表れる可能性があります。

ワクチンの接種によって、体内では免疫反応が起こり始めます。一般的に、接種部位の腫れや痛み、赤みなどの局所的な反応や、発熱・だるさといった全身の症状が、接種後の数時間から24時間以内に見られることがあります。

運動によって血流が促進されることで、こうした症状が一時的に強まる可能性があります。

また、稀ではありますが、アナフィラキシーのような重いアレルギー反応や、喘息の症状が現れることも報告されています。とくにアレルギー体質のある方や、呼吸器の持病を持つ方は、無理な行動を避けるようにしましょう。運動中に体調を崩すと、早期の対応が難しくなることもあります。

安全に過ごすためにも、接種当日は体を休め、安静を心がけることが大切です。接種後に気になる症状が出た場合は、早めに医療機関へ相談するようにしましょう。

激しい運動と軽い運動の具体的な分類

インフルエンザ予防接種後の体調管理では、「激しい運動」と「軽い運動」の違いを正しく理解しておくことが大切です。接種直後は体に負担をかけないように過ごすことが望ましく、特に激しい運動は控えるよう推奨されることがあります。

一般的に激しい運動とされるのは、息が上がるほどの強度があるものです。

  • ランニング・マラソン
  • 水泳
  • エアロビクス
  • 筋力トレーニング
  • 競技形式のスポーツ など

これらは心拍数の上昇や筋肉への負荷が大きいため、体調が安定するまで避けた方がよいとされています。

一方で、日常生活の一部として行われるような軽い動きであれば、多くの場合問題ないとされています。

  • 階段の上り下り
  • ウォーキング
  • ストレッチ
  • 軽いヨガ
  • 短時間の自転車通勤 など

ただし、体力や年齢によっては、これらの活動でも負担に感じる場合があるため、無理は禁物です。

運動の強度を見分ける一つの目安として、「普段行っていない運動」や「息が切れるほどの活動」は控えるとよいでしょう。体調に合わせて無理のない範囲で動くことが基本です。たとえば、一駅分歩く程度や軽めのストレッチなど、穏やかな活動であれば継続可能とされることが多いです。

もし運動の可否について不安がある場合は、予防接種時に医師へ相談してみるのも一つの方法です。個人の体調や持病の有無に応じて、より適切なアドバイスを受けられるでしょう。

予防接種当日と翌日の過ごし方

インフルエンザの予防接種を受けた当日と翌日は、体調の変化に注意しながら過ごすことが大切です。

接種後は、まれにアナフィラキシーなどの強いアレルギー反応が現れることがあるため、少なくとも30分程度は医療機関内で安静にして様子を見るよう推奨されています。この時間に異常がなければ、基本的には通常通りの日常生活に戻ることが可能とされています。

当日は、激しい運動を避けること以外は、普段と同じように過ごして問題ないとされるケースが多いです。入浴も接種から1時間以上経過していれば可能といわれていますが、接種部位を強くこすらないよう注意しましょう。

熱いお湯や長時間の入浴は体への負担が大きくなるため、控えめにするのが無難です。発熱や倦怠感などの体調の変化がある場合は、入浴を見合わせ、ゆっくり休むことがすすめられます。

翌日は、十分に睡眠をとって体調が安定していれば、軽い運動を再開することができます。ただし、接種後24時間以内は、体に過度な負荷をかけないように意識しましょう。たとえば、息が上がるような運動は避け、ウォーキングやストレッチ程度にとどめるのが望ましいとされています。

万が一、副反応と思われる症状が出た場合には、無理をせず安静を心がけ、必要に応じて医療機関に相談することも検討してください。学校や職場では、体調の変化があった場合に備えて、予防接種を受けたことを周囲に伝えておくと安心です。

インフルエンザ予防接種前の運動に関する注意点

インフルエンザ予防接種を受ける前は、体調管理をしっかり行うことが大切です。接種直前に激しい運動をすると、疲労が残り、接種後の体調変化に気づきにくくなることもあるため、注意が必要とされています。

体調を安定させたうえで接種を受けることで、安心して経過を観察しやすくなります。ここでは、接種前に気をつけたいポイントを紹介します。

接種前の運動による体調への影響

インフルエンザ予防接種前に強い疲労を感じるような運動を行うと、その後に体調の変化が起きた際に、原因の判別が難しくなることがあります。たとえば、接種後に発熱や倦怠感が生じた際、それがワクチンによる一時的な反応なのか、運動による体調の変化なのかが分かりにくくなる可能性があります。

また、激しい運動は一時的に体にストレスを与えることがあり、個人差はあるものの、一時的に免疫力が低下することも報告されています。この状態でワクチン接種を受けると期待される免疫反応が適切に起こらない場合があります。さらに、運動中に重篤な副反応が発生した際の対処が遅れる危険性も考慮すべき要因となります。

このようなリスクを避けるためには、接種前日から当日の朝にかけては、過度な運動を避けることが推奨されています。体調が万全な状態で臨むことで、ワクチンの効果を最大限に引き出し、副反応のリスクを最小限に抑えることができるとされています。

規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠と栄養をとって接種に臨むことで、安心して経過を観察しやすくなるでしょう。

体調管理と接種効果を高める準備

インフルエンザワクチンの効果を最大化するためには、総合的な体調管理が欠かせません。ワクチンは免疫力がしっかりと身体に備わっている状態でより効果を発揮することができるため、接種前の準備期間における体調管理が重要な要素となります。適度な運動は免疫機能の維持に寄与しますが、接種直前の激しい運動は避ける必要があります。

栄養面では、免疫細胞の約70%が腸内に存在するため、腸内環境を整える食品の摂取が推奨されています。ヨーグルト、漬物、納豆などに含まれる乳酸菌や納豆菌は腸内環境を整え、免疫力の向上に寄与するとされています。接種前は飲酒や寝不足を避け、十分な休養とバランスの取れた栄養摂取を心がけることが大切です。

睡眠の質も接種効果に影響を与える重要な要素です。十分な睡眠は免疫機能を正常に保つために不可欠であり、接種前には規則正しい睡眠習慣を維持することが望ましいでしょう。体調が優れない場合や37.5℃以上の発熱がある場合は接種を延期し、万全な状態で接種を受けることが推奨されています。

運動習慣がインフルエンザワクチンに与える影響

日常的に運動を取り入れることは、健康維持に役立つとされていますが、一部の研究では、継続的な運動習慣がワクチン接種後の免疫応答に良い影響を与える可能性が示唆されています。

適度な運動により体調が整いやすくなり、免疫機能が安定しやすい状態を保てると考えられています。ただし、運動の影響には個人差があるため、誰にでも当てはまるわけではありません。

次に、日常生活に無理なく取り入れやすい運動の種類について紹介します。

定期的な運動による免疫反応の向上

継続的な運動習慣は、免疫システムの根本的な機能強化をもたらします。早稲田大学の研究では、適度な運動を継続することで体内の免疫細胞の活動が安定し、外部からの刺激に対する体の反応性が変化する傾向があることが示唆されています。

参照元:早稲田大学 鈴木克彦教授「適度な運動」で免疫力は上がる!運動習慣を作るコツと注意点|World Academic Journal

筋肉は単に体を動かすための組織だけでなく、免疫機能の維持に関与する栄養素の一部を蓄える役割も持っています。特に、免疫系がエネルギー源として利用するアミノ酸が筋肉に貯蔵されていることから、基礎的な筋力を保つことは、間接的に健康維持をサポートする要素の一つと考えられています。

このような背景から、無理のない範囲で筋力トレーニングや軽い運動を取り入れることが、体調管理には不可欠です。

ある研究では、高齢者158人を対象に、週5回の運動(有酸素運動や筋トレなど)を6か月間実施した結果、唾液中の免疫物質sIgAの分泌量が全ての年齢・性別グループで増加したことが確認されました。これは、運動が粘膜免疫を高め、感染予防に役立つ可能性を示しています。

参照元:Effects of exercise, age and gender on salivary secretory immunoglobulin A in elderly individuals|PubMed

年齢とともに体力や免疫機能は変化するとされていますが、生活習慣の中に無理のない運動を取り入れることで、体調管理や健康維持にポジティブな影響が期待できる可能性があります。

適度な運動による抗体獲得の促進

ワクチン接種後の体調管理において、軽度な運動が体内の免疫応答に影響を与える可能性があるとする研究が報告されています。

米国・アイオワ州立大学の研究によれば、インフルエンザワクチン接種後に約90分間の軽度~中等度の運動を行った被験者では、運動を行わなかった群と比較して、体内での抗体量に差が見られたという結果が発表されています。

参照元:Exercise after influenza or COVID-19 vaccination increases serum antibody without an increase in side effects|Sience Direct

運動によって血流が促されることで、体内に取り込まれたワクチン成分がより広く分布しやすくなり、免疫細胞と接触する機会が増えます。また、運動によって体温が上昇することで、免疫細胞の活動が活性化しやすくなり、より効率的な抗体産生が期待できます。

運動の強度については「会話ができる程度」の無理のない運動、いわゆる「ニコニコペース」が適しているとされます。ジョギング、ウォーキング、軽めの自転車こぎ、ストレッチや簡単な筋トレなど、息が軽く上がる程度の有酸素運動が一つの目安とされます。一方で、過度な運動は一時的に免疫機能が下がる「オープンウィンドウ」現象と呼ばれる状態を引き起こすリスクもあるため、強度や時間には十分な配慮が必要です。

適度な運動でインフルエンザを予防する方法

日常的な運動習慣は、ワクチン接種や手洗いなどの基本的な感染対策と組み合わせることで、より効果的なインフルエンザ予防効果が期待できます。

一部の研究では、適度な運動を継続している人は、風邪を引く頻度が比較的少ない傾向にあり、感染症に関連する健康リスクが低下する可能性が示唆されています。

ただし、こうした結果には個人差があるため、誰にでも当てはまるわけではありません。では、日々の生活の中でどのような運動を取り入れるとよいのでしょうか。

免疫機能の維持に役立つ運動の種類と頻度について

免疫機能の維持には、軽く汗をかく程度の有酸素運動が適しているといわれています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準」では、毎日60分程度の歩行や犬の散歩、掃除、自転車などの軽い身体活動に加えて、週に2回以上、1回あたり30分程度の息がやや弾む運動を行うことが推奨されています。

具体的には、ウォーキングやラジオ体操、軽めの筋力トレーニングが例として挙げられます。筋肉は体内のアミノ酸の貯蔵庫としての役割を持ち、免疫機能を支える栄養素の供給に関係すると考えられているため、スクワットなどの自重運動を取り入れるのも一つの方法です。

また、早稲田大学の研究では、高齢者が週2回の運動教室を1年間継続した結果、唾液中の免疫に関連する物質の分泌量が増えたことが示されています。この研究は、継続的な運動習慣が年齢を問わず免疫機能の維持に役立つ可能性を示唆していますが、効果には個人差があります。

参照元:「適度な運動で免疫力向上」|花王

過度な運動が免疫力に与える悪影響

適度な運動習慣は免疫機能の維持にも効果的ですが、過度な運動はかえって感染リスクを高めることが明らかになっています。激しい運動後には「オープンウィンドウ」と呼ばれる免疫機能低下期間が数時間から数日続き、体が外部からのウイルスや細菌に対して影響を受けやすい状態となります。

ある研究では、ハードな運動を日常的に行っているアスリートと、比較的穏やかな運動習慣のある人とを比べた際に、アスリートの方が風邪に関連する症状を自覚する頻度が高かったというデータもあります。このような研究結果からも、運動の強度や回数が体調に影響を与える可能性が示唆されています。

参考:Increased risk of respiratory viral infections in elite athletes: A controlled study|PubMed

また、過剰なトレーニングを続けることで「オーバートレーニング症候群」と呼ばれる状態に至ることもあり、慢性的な疲労感や睡眠の質の変化、体調を崩しやすくなるといった不調が生じるケースがあるといわれています。十分な休息や栄養補給を取らずにトレーニングを続けると、体の回復が追いつかず、結果として体調を整えにくくなることもあるため、注意が必要です。

運動は心身の健康を支える一方で、やり過ぎや疲労の蓄積が体調に影響を及ぼすこともあります。体調やライフスタイルに応じて、無理のない範囲で運動を行い、十分な休息を取り入れることが大切です。

季節に応じた運動習慣の継続のコツ

インフルエンザが流行しやすいとされる12月から3月の時期は、気温や体調の変化に応じて、無理なく運動を続ける工夫が求められます。厚生労働省によると、日本国内ではこの時期にインフルエンザの流行がピークを迎えるため、継続的な運動による免疫力維持が感染予防の鍵となります。

特に寒い季節の屋外運動では、急激な温度変化への対応が重要です。運動前にはウォーミングアップを入念に行い、防寒対策として重ね着や手袋・マフラーなどを活用するとよいでしょう。

また、屋内で運動する場合には、混雑する時間帯を避けるなど、環境面に配慮した行動が安心につながります。運動後の手洗いや着替えなどの基本的な衛生管理も、体調を崩さないための一つの方法といえます。

自宅でも取り入れやすい運動としては、ストレッチやヨガ、自重を使ったトレーニングなどが挙げられます。これらは特別な器具が不要なため、生活リズムに組み込みやすく、身体を動かす習慣づくりにも適しています。

また、体調管理と運動のバランスも大切な要素です。発熱や強い倦怠感などがある場合は、無理をせず運動を控えるようにしましょう。

軽度の不調と感じられる場合でも、体に負担の少ない内容に調整するなど、様子を見ながら進めることが大切です。流行期は特に体調の変化に気を配りながら、自分に合ったペースで無理なく継続することが、健康的な生活習慣につながります。

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水曜日診療担当:金子堅一郎先生
(順天堂大学小児科名誉教授)