子どもの熱性けいれん対処法は?5分ルールと救急車の判断基準
子どもが高熱と共に全身を震わせる熱性けいれんは、5分以内に自然に止まることがほとんどです。
突然の症状に慌ててしまい、どう対処すればいいのか分からなくなる親御さんは多いでしょう。救急車を呼ぶべきか、様子を見るべきか、初めて経験する場合は特に判断に迷います。
本記事では、熱性けいれんへの向き合い方や、受診を検討する際の目安として広く知られている「5分ルール」、さらに緊急の対応が推奨されるとされる状態について説明します。
いざという時に落ち着いて行動できるよう、備えておきましょう。
- 1942年、神奈川県小田原市で出生
- 鳥取大学医学部卒業
- 順天堂大学医学部附属順天堂病院小児科入局
- 日本小児科医会名誉会長
- 2024年11月旭日双光賞受賞
子どもが熱性けいれんを起こした時の対処手順
目の前で子どもが突然けいれんを起こした時、動揺してしまう保護者がほとんどです。
「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン」によると、熱性けいれんは小児の約7~11%が経験するもので、決して珍しい状態ではありません。どの家庭にも起こり得るため、基本的な対応を知っておくと慌てずに対応できます。
多くの場合、5分以内に自然に治まり、後遺症も残りませんが、けいれんの続く時間やそのときの様子によっては医療機関への相談が必要になる場合もあります。ここでは、安全確保から記録の仕方まで、知っておくと役に立つ流れを解説していきます。
安全な場所に横向きに寝かせる
けいれん時にまず行うことは、子どもを安全な場所に移し、横向きに寝かせることです。子どもがけがをしないよう、周囲に硬い物や角のある家具があればできる範囲でどかし、広めのスペースを確保します。けいれん中は嘔吐することが多く、吐物が気道をふさいで窒息する危険があるため、顔と体を横に向けましょう。
衣服がきつい場合は、首元のボタンやベルトなどをゆるめ、呼吸がしやすい状態を整えます。けいれん中は呼吸が弱くなるため、気道を確保する体位が必要です。顎を少し上げると、呼吸がしやすくなりますが、無理に姿勢を変えず、あくまで子どもの動きに合わせて優しく対応してください。
この段階では無理に動かしたり揺らしたりせず、静かに見守ることが大切です。安全な体勢が確保されたら、けいれんの様子を落ち着いて観察する余裕が生まれます。
けいれんの時間と様子を記録する方法
けいれんの持続時間を把握することは、医師の診断に欠かせません。時計を確認し、けいれんが始まった時間と止まった時間を記録してください。5分以上続くかどうかが、救急車を呼ぶかどうかの判断基準になります。
また、余裕があれば体のどの部分が震えているのか、左右で差があるか、目の向きや呼吸の様子など、気づいた範囲で観察しておくと情報として、単純型か複雑型かを判断する材料になります。
スマートフォンなどで動画を撮影しておくのも良い方法です。実際のけいれんの様子を医師に見せることができ、正確な診断につながります。けいれんが止まった後、意識が戻るまでの時間も確認しておきましょう。
やってはいけない対処法
口の中に物を入れることは絶対にやめてください。「舌を噛むのではないか」と心配して、割り箸やハンカチ、指などを入れる方がいますが、これは窒息の危険性があります。
実際には舌を噛むことはほとんどありません。口の中に物を入れると、舌を押し込んで気道を塞いだり、口の中を傷つけた際の出血で窒息したりする恐れがあります。
けいれんを止めようと体をきつく抱きしめたり、揺さぶったりすることも避けましょう。呼吸がいっそう苦しくなり、かえって危険です。体を押さえつけても、けいれんは止まりません。
人工呼吸や心臓マッサージも不要です。数分のけいれんで呼吸や心臓の動きが止まることはありません。けいれんが治まれば、自然と呼吸は再開します。焦って無理な処置をすると、かえって子どもを危険にさらすことになります。
まずは安全な姿勢を保ち、不必要な刺激を加えないように見守ることが重要です。
救急車を呼ぶべき5分ルールと判断基準
熱性けいれんで最も迷うのが「救急車を呼ぶべきか」という判断です。
多くの熱性けいれんは5分以内に自然に止まるため、5分という時間が重要な目安になります。けいれんが5分以上続く場合は自然に止まりにくくなることが分かっているからです。
ここでは、救急車を呼ぶべき具体的な状況と、けいれんが止まった後の受診タイミングについて解説します。判断に迷った時、どう行動すればよいのかを知っておきましょう。
5分以上続く場合はすぐに救急車を呼ぶ
けいれんが5分を超えた場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。熱性けいれんの多くは5分以内に自然に止まりますが、5分以上続く場合は重積発作の可能性があり、救急対応が必要になるかもしれないからです。救急車内では必要に応じて酸素投与を受けることができるため、けいれんによる呼吸状態の悪化を防げます。
救急車を呼ぶ際には、可能な範囲で次のような情報を伝えると、医療機関側も状況を把握しやすくなります。
- けいれんが始まったおおよその時刻
- 発熱など、けいれん前の様子
- 現在の呼吸や意識の状態
5分以内におさまった場合でも、初めてのけいれんの場合は医療機関を受診する方が安心です。救急車を呼ぶ必要はありませんが、自家用車やタクシーなど、子どもの様子を確認しながら安全に移動できる方法を選ぶとよいでしょう。
5分以内でも救急車が必要になるケース
けいれんが5分以内で止まっても、救急車を呼ぶべき場合があります。最も注意が必要なのは、意識の回復が悪い時です。けいれんが止まっても呼びかけに反応しない、視線が合わない、極端にぐったりしているなど、普段の様子と明らかに違う場合は、速やかな医療処置が必要になります。
1日の中でけいれん発作を複数回繰り返す場合も、すぐに受診が必要です。24時間以内に2回以上けいれんを起こす場合、髄膜炎や脳炎といった重篤な感染症の可能性が高くなります。単純な熱性けいれんではない可能性を考え、必ず医療機関を受診しましょう。
呼吸が不規則、弱い、止まりそうな場合も緊急性が高い状況です。けいれんが止まった後も顔色や呼吸状態が悪い、激しく嘔吐するなど、普段と様子が異なる場合には、早めに病院を受診してください。
初回の熱性けいれんは原因が明確でないため、髄膜炎や脳炎など他の重篤な病気の可能性を除外するためにも、医療機関での診察が必要です。
けいれんが止まった後の受診タイミング
初めてのけいれんの場合は、5分以内に止まり意識も回復したとしても、速やかに医療機関を受診することが望ましいです。夜間や休日でも、救急病院などを利用しましょう。熱性けいれん以外の病気が原因ではないか調べるため、医師の診察が必要になります。
一方、過去に医療機関で熱性けいれんと診断されており、その後も同様の発作が短時間で落ち着いているのであれば、必ずしも緊急の受診が必要とは限りません。けいれんが治まった後、10~20分ほどで反応が戻り、普段の様子に近づいていれば、翌朝の受診でもよいでしょう。
ただし、けいれんが止まった後も意識がはっきりしない時、ぐったりしている時や普段と状態が違って心配な時は、救急車などで早急に病院を受診してください。移動中に再びけいれんが起こる可能性もあるため、保護者が一人で運転して受診するのは避けた方が無難です。
子どもの熱性けいれんの基本知識
熱性けいれんは、乳幼児期に起こる発熱に伴う発作で、38℃以上の発熱時に意識を失い全身がけいれんする症状です。初めて目の当たりにすると驚きや不安を覚える保護者の方は少なくありませんが、比較的よく知られている疾患の一つです。
発作の多くは短時間で落ち着き、年齢の成長に伴って起こらなくなり、後遺症が残ることもほとんどないとされています。
熱性けいれんが起こる年齢と頻度
「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」によると、熱性けいれんは生後6カ月から5歳頃までの乳幼児に起こるとされています。なかでも1歳前後の時期に確認されやすく、多くは3歳までに初回の発作を経験します。
発症率については国や地域によって幅があり、国内の有病率は5歳までに3.4%と報告されており、20~30人に1人は経験する比較的身近な疾患であることがわかります。
初めて熱性けいれんを経験した子どものうち、15~30%前後が再び発作を起こすと報告されています。これには遺伝的な要因も関係しており、家族に熱性けいれんの経験がある場合は発症・再発しやすい傾向にあります。
- 家族歴(両親のどちらか、または兄弟に熱性けいれんの既往)
- 初発年齢が1歳未満
- 発熱からけいれんまでの時間が1時間以内
- 発作時の体温が39℃以下(比較的低い体温で起きている)
上記いずれかの要因があると再発率は約2倍になると言われています。
しかし、発症率が上がると言っても必ず起こるわけではありませんし、発作が複数回起こるかどうかも子どもによって違います。繰り返し発作を経験する子どももいますが、5~6歳頃にはほとんどのケースで発作が自然にみられなくなります。
単純型と複雑型の違い
熱性けいれんは、発作のあらわれ方によって「単純型」と「複雑型」に分類されます。日本では単純型が最も一般的で、多くの子どもがこのタイプに該当します。
単純型は、熱性けいれんの標準的なタイプで、次の特徴を満たす場合に分類されます。
- 発作が全身にあらわれる(全身けいれん)
- 発作時間が15分以内
- 24時間以内に1回だけ起こる
「突然全身がガクガク震えるが、数分でおさまる」という形で、多くの症例がこの範囲に含まれます。
複雑型熱性けいれんは、次の3つの条件のいずれか1つ以上を満たすものです。
- 体の一部だけに起こる(部分発作)
- 発作時間が15分以上続く
- 24時間以内に複数回起こる
複雑型は単純型に比べて発作を繰り返しやすく、低い熱でもけいれんが起こりやすい傾向があります。また、将来てんかんに移行するリスクがわずかに高くなります。
ただ、必ずしも「複雑型=危険」という事ではありません。大多数の子どもはてんかんを発症せずに、成長と共に自然に治るケースがほとんどです。過度な心配は不要ですが、気になる点があれば小児科や小児神経科に相談しましょう。
熱性けいれんの予防と再発への備え
熱性けいれんは、子どもによっては複数回みられることがあり、再発の可能性が指摘されるケースもあります。ただし、どの子どもにも予防が必要になるわけではありません。
過去の発作の長さや発熱時の状況、体質的な要素など、さまざまな情報を踏まえて医療機関で判断されます。医師と相談しながら、お子さんに合った対応を選びましょう。
ダイアップ坐薬を使った予防方法
ダイアップ坐薬は、医師が必要と判断した場合に処方される薬剤で、熱性けいれんの再発を防ぐ目的で使用されることがあります。
主成分としてジアゼパムが含まれますが、その作用や効果の現れ方には個人差があるため、医師の説明に沿って使用することが大切です。
医師から予防目的での使用が指示された場合、次のような手順が一般的です。
- 子どもに発熱(37.5℃以上)がみられたときに、1回目を肛門から挿入
- 1回目からおおよそ8時間後に2回目を追加投与
熱性けいれんは発熱直後から24時間以内に起こることが多いため、37.5℃の発熱に気づいた時点で速やかに1回目を使用してください。8時間後に2回目を使用しますが、すでに解熱していても忘れずに使用してください。2回目の投与ではおおむね16時間効果が持続します。
なお、体重に応じて4mg、6mg、10mgの3種類から使用量を判断します。副作用として、眠気やふらつきが出ることがあるので、使用した翌日は休園・休校し、転倒などの事故に注意が必要です。
また、坐薬タイプの解熱剤を使う場合は、ダイアップ坐薬の使用後30分以上間隔をあけてから使いましょう。
予防薬の使用が検討されるケース
ダイアップ坐薬は、すべての熱性けいれんの子どもに対して常に使うものではありません。医師は、再発のリスクが高い子どもに限定して処方を検討します。
具体的には以下のようなケースです。
| 再発経験がある | 過去に2回以上の熱性けいれんを起こしている 発作の内容や年齢などを総合して、再発リスクが高いと医師が判断した場合 |
|---|---|
| 発作が長く続いた | 発作時間が15分以上続いたことがある 発作の途中で呼吸や意識の異常がみられたことがある |
| 家族歴や神経学的リスクがある | 両親やきょうだいに熱性けいれんまたはてんかんの既往がある 発達遅滞や神経学的異常が熱性けいれん出現前から存在している |
| その他の医師が判断したリスク要因がある | 生後12カ月未満で発症した場合 発熱後1時間以内に発作が起こった場合 発作時の体温が38℃未満の場合 部分発作や、24時間以内に複数回発作がある場合 |
予防投与の期間は、最後の発作から1~2年間、または4~5歳頃まで使用するのが一般的です。ただし、医師との相談のうえで個別に判断されます。
熱性けいれんは多くの場合自然とみられなくなるので、予防が必須というわけではありません。予防薬の使用は、医療アクセスの状況や保護者の不安の強さなども考慮して決定されます。
