花粉症の症状が酷くてつらいときは受診すべき?治療が必要な目安を解説
花粉症の症状が酷くてつらくて、このまま我慢していていいのか迷っている方は多いのではないでしょうか。毎年春になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみに悩まされながらも、市販薬でなんとかしのいでいる方も少なくありません。
2019年の厚生労働省による全国調査では、花粉症の有病率は42.5%と報告されており、近年増加傾向にあります。花粉症は命に関わる病気ではありませんが、症状が酷い場合や長く続く場合には、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
また、鼻の炎症が持続すると、副鼻腔炎などを併発するケースもみられます。
この記事では、花粉症で受診を検討したい目安や重症度の考え方、早めに治療を始めることのメリットについて解説します。
自分の症状を客観的に見直し、適切なタイミングで医療機関を受診するための参考にしてください。
- 1942年、神奈川県小田原市で出生
- 鳥取大学医学部卒業
- 順天堂大学医学部附属順天堂病院小児科入局
- 日本小児科医会名誉会長
- 2024年11月旭日双光賞受賞
花粉症の症状で受診を検討したい目安
「病院に行くほどではない」と思いながらも、毎年酷くつらい症状を我慢している方は少なくありません。しかし、症状の強さや持続期間、日常生活への影響の程度によっては、医療機関での評価や治療が役立つ場合があります。
市販薬で十分な改善がみられない場合や、症状が長引いている場合も、一度相談してみることを検討してよいでしょう。
重症・最重症にみられる花粉症の症状
- 軽症
- 中等症
- 重症
- 最重症
花粉症の重症度分類は「鼻アレルギー診療ガイドライン」に基づくもので、1日に起こるくしゃみや鼻をかむ回数、鼻づまりの程度によって判定されます。
「重症」と判定される目安は、くしゃみまたは鼻をかむ回数が1日に11〜20回程度、あるいは鼻づまりがひどく、1日のうちかなりの時間を口呼吸で過ごしている状態です。
「最重症」では、くしゃみや鼻かみが21回以上、もしくは鼻がほぼ1日中完全につまっている状態を指します。
軽症であればセルフケアで対応できる場合もありますが、重症以上では市販薬だけで症状を十分にコントロールできないこともあります。まずは自分の症状を客観的に振り返り、重症度の目安を確認してみましょう。
仕事や睡眠など生活に支障が出ている
花粉症は、症状そのものだけでなく、仕事や日常生活にも大きな影響を及ぼすことがあります。集中力の低下や作業効率の悪化を感じる人は少なくありません。
また、鼻づまりは睡眠の質にも影響します。鼻づまりを伴うアレルギー性鼻炎では、夜間に何度も目が覚めたり、口呼吸による喉の乾燥が起こったりすることで、十分な休息がとれない場合があります。
日中の眠気や倦怠感、疲労感につながることもあります。仕事中にぼんやりしてしまう、イライラしやすい、ミスが増えるといった状態が続いている場合は、花粉症の影響が背景にある可能性も考えられます。
生活に支障が出ていると感じる場合は、医療機関への相談を検討してみましょう。
市販薬で十分に改善しない
市販薬を数日〜1週間ほど使用しても症状が十分に改善しない場合は、処方薬への切り替えを検討するタイミングかもしれません。
医療機関では、症状に応じて複数の薬を組み合わせるなど、より強力な治療が可能です。
症状が長く続いている
花粉症と風邪の症状は似ていますが、持続期間に大きな違いがあります。
風邪であれば通常数日から1週間程度で症状が改善しますが、花粉症は花粉が飛散している期間中ずっと続きます。
くしゃみが連発する、さらさらとした鼻水が出続ける、目のかゆみを伴うといった症状が2週間以上続く場合は、花粉症の可能性も考えられます。毎年同じ時期に似たような症状が出るという方は、花粉症である可能性がさらに高まります。
自己判断で市販薬を使い続けるよりも、医療機関で診断を受けて自分に合った治療を開始する方が、症状を効果的に抑えられる場合があります。
また、症状が軽いうちに受診しておくと、花粉飛散のピーク時にも症状を軽く抑えやすくなります。
複数の不調が同時に出ている
花粉症の症状は、鼻や目だけにとどまりません。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった代表的な症状に加えて全身症状が現れることがあります。
厚生労働省の研究班による調査では、スギ花粉症で鼻や目以外の症状を訴える方が多いことがわかっています。
- 頭痛や頭重感
- 全身のだるさ・倦怠感
- 喉のイガイガ感や痛み
- 皮膚のかゆみ
- 集中力の低下
- 気分の落ち込み
複数の症状が重なると、生活の質が大きく低下することがあります。「くしゃみや鼻水に加えて体のだるさが続いている」「目のかゆみがひどくて集中できない」といった状態が続く場合は、医療機関への相談を検討してみましょう。
症状に応じて薬を組み合わせることで、より効果的にコントロールできる場合があります。
花粉症の症状を放置することで起こる影響
「花粉の季節が終われば治るから」と我慢を続けていませんか。花粉症を放置すると、症状が悪化するだけでなく、副鼻腔炎などの合併症を引き起こすリスクもあります。
ここでは、放置によって生じうる影響について説明します。
鼻や喉の状態が悪化する可能性
花粉症による鼻の炎症が長引くと、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)を併発するリスクが高まります。アレルギー性鼻炎や花粉症がある方は、慢性副鼻腔炎を併発しやすいとされています。
副鼻腔炎になると、粘り気のある黄色や緑色の鼻水が出る、頭重感が続く、においがわかりにくくなるといった症状が加わります。
急性副鼻腔炎の段階で適切な治療を受ければ比較的早く治りますが、放置して慢性化すると、治療に3か月以上かかることも珍しくありません。
さらに症状が進行すると、鼻茸(はなたけ)と呼ばれるポリープができることがあります。鼻茸が大きくなると鼻の通りがさらに悪くなり、嗅覚障害を引き起こす場合もあります。
花粉症と思っていた症状の背景に、副鼻腔炎が隠れているケースもみられます。鼻水の色が変わってそれが続いている、顔面に痛みや圧迫感がある、においがわかりにくいといった症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科で相談しましょう。
睡眠や精神面など全身に及ぶ影響
花粉症の影響は、鼻や目の症状にとどまりません。慢性的な鼻づまりは睡眠の質を低下させ、日中の眠気や疲労感、集中力の低下を引き起こします。
睡眠不足が続くと、免疫機能が低下して風邪をひきやすくなったり、ストレスを感じやすくなったりします。イライラや気分の落ち込みといった精神面への影響も無視できません。
鼻づまりによる口呼吸は、喉の乾燥や痛みの原因にもなります。口から吸い込んだ空気は鼻呼吸のときのように加湿・加温されないため、喉や気管支に負担がかかりやすくなります。
また、花粉症と気管支喘息は関連があることがわかっており、鼻の炎症が十分にコントロールされていないと、喘息の症状が悪化しやすくなる可能性があります。
花粉症は命に関わる病気ではありませんが、生活の質を長期間にわたって低下させます。毎年つらい思いをしているなら、一度きちんと治療を受けることを検討してみてください。
花粉症の症状に合わせた治療の考え方
花粉症の治療は、症状の種類や強さ、生活スタイルによって最適な方法が異なります。
くしゃみや鼻水が中心なのか、鼻づまりが強いのかによって選択される薬は変わりますし、仕事や受験など生活状況によっても治療方針は調整されます。
医療機関では、こうした要素を踏まえて、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療を提案してもらえます。
症状の強さに応じた対応
花粉症の治療薬には、内服薬、点鼻薬、点眼薬などさまざまな種類があります。症状の種類や強さによって、使用する薬が異なります。
- くしゃみや鼻水が主な症状の場合:抗ヒスタミン薬
- 鼻づまりが強い場合:点鼻ステロイドや抗ロイコトリエン薬
- 目のかゆみが強い場合:抗アレルギー点眼薬
軽症であれば抗ヒスタミン薬の内服だけで対応できることもありますが、中等症以上では点鼻薬や点眼薬を併用することが多くなります。重症・最重症の場合は、複数の薬を組み合わせて使用したり、治療内容を調整することもあります。
鼻アレルギー診療ガイドラインでは、症状の病型(くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型、充全型)と重症度に基づいて治療薬を選択することが推奨されています。
自己判断で市販薬を継続するよりも、医師に自分の症状を伝えて適切な薬を処方してもらう方が、効果的に症状を抑えられる可能性が高いです。
生活状況を考慮した治療の進め方
治療法を選ぶ際には、仕事や生活への影響も考慮する必要があります。たとえば、眠気が出やすい薬は車の運転をする方や機械を操作する方には向いていません。
最近の第2世代抗ヒスタミン薬は眠気が少ないとされていますが、薬によって個人差があります。
毎年症状が強く出る方や、受験や大事な仕事の時期に花粉症のピークが重なる方には、「初期療法」が有効です。花粉飛散開始の1〜2週間前から薬を飲み始めることで、シーズン中の症状を軽く抑えることが期待できます。
また、根本的な体質改善を目指す方には「舌下免疫療法」という選択肢もあります。スギ花粉症の場合、毎日舌の下に錠剤を含むことで、3〜5年かけて免疫を調整していく治療法です。スギ花粉症に対する追跡調査でも有意に良好な効果を示したことがわかっています。
自分の生活スタイルや今後の予定を医師に伝えて、無理なく続けられる治療法を選ぶことが大切です。
早めに医療機関へ相談するメリット
「もう少し我慢すれば花粉の季節も終わる」と考えて、毎年つらい時期をやり過ごしていませんか。
早めに医療機関を受診することには、いくつかの利点があります。
初期療法で症状を軽く抑えやすくなる理由
花粉症では、症状が強く出る前から治療を始める「初期療法」が有効とされています。全国規模で行われた調査では、初期療法を行った人は、症状が出てから治療を始めた人と比べて、くしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状がいずれも軽く済んだと報告されています。
その背景には、症状が出ていない時期でも鼻の粘膜に微小な炎症が続いていることがあります。あらかじめ薬で炎症を抑えておくことで、花粉の飛散ピーク時にも症状をコントロールしやすくなると考えられています。
毎年症状が強く出る方は、花粉が本格的に飛び始める前の受診を検討してみましょう。
生活への影響を減らしやすくなる
花粉症の症状は、くしゃみや鼻水といった不快感だけでなく、睡眠の質の低下や集中力の低下など、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
鼻づまりによって夜間に何度も目が覚めてしまったり、日中にぼんやりしてしまったりするケースも少なくありません。
早めに医療機関で相談することで、症状のタイプや生活状況に合わせた治療を選択できるため、こうした生活への影響を軽減しやすくなります。たとえば、眠気の少ない薬を選ぶ、鼻づまりが強い場合は点鼻薬を併用するなど、細かな調整が可能です。
「多少つらいけれど我慢できる」と感じていても、仕事や学業、家事に支障が出ている場合は、受診を検討する一つの目安になります。
