子供の円形脱毛症はどのぐらいで治る?原因を解説
子供の髪に円形の脱毛を見つけたとき、多くの保護者は不安を感じます。お子さんの髪や地肌に異変を感じてドキッとした経験がある方は少なくないでしょう。
円形脱毛症は大人だけでなく子供にも起こるもので、文字通り円形に髪の一部が抜けてしまう症状です。
円形脱毛症は自己免疫疾患の一つと考えられています。不安を感じてしまいますが、適切な治療と周囲のサポートがあれば改善が期待できる場合があります。
この記事では、子供の円形脱毛症について、原因、治るまでの期間や治療法などを詳しく解説します。
子供の円形脱毛症とは
円形脱毛症は、円形や楕円形に髪の毛が抜ける皮膚の病気です。子供から大人まで誰にでも起こる可能性があり、何の前触れもなく突然発症します。
脱毛部分と髪が生えている部分の境界がはっきりしているのが特徴で、痛みやかゆみなどの自覚症状はほとんどありません。
子供にも起こる脱毛症
子供の場合、自分で脱毛に気づくことは少なく、保護者や理美容師が髪を切る際に発見されることが多いです。1歳から発症の可能性があり、15歳以下で発症した場合には回復率が低いといわれています。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン 円形脱毛症診療ガイドライン2024
14歳以下の治療では成人の治療より良好であるため、気づいた段階でできるだけ早く医師の診断をうけたほうがよいでしょう。
円形脱毛症の種類と特徴
円形脱毛症は脱毛の範囲や形によって、いくつかのタイプに分類されます。
| 円形脱毛症の型 | 特徴 |
|---|---|
| 単発型 | コイン大の脱毛斑が1~2か所できる |
| 多発型 | 複数個所に脱毛斑ができる |
| 蛇行型 | 生え際が帯状に抜ける |
| 全頭型 | 脱毛症が全頭部に拡大したもの |
| 汎発型 | 全頭部の脱毛に加えて脱毛が全身に拡大 |
| びまん型 | 境界明瞭な脱毛斑ではなく頭部全体が脱毛する |
単発型は、円形脱毛症の中で最も多く見られ、頭部だけでなく眉毛や体毛に現れるケースもあります。症状が軽い場合は自然に改善することもありますが、放置すると広がる可能性もあるため注意が必要です。
多発型は単発型から移行するケースもあります。脱毛斑が結合して大きくなる場合や、拡大や縮小を繰り返しながら進行することも。
蛇行型の発症例は他の型と比較して比較的少ないものの治りにくい傾向があるとされています。逆蛇行型といって前頭部と頭頂部に帯状に脱毛する逆パターンのものが発症するケースもあります。
全頭型は、頭部全体の髪が抜け落ちてしまうタイプです。汎発型は、頭髪だけでなく眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜けるタイプです。
子供でも全頭型や汎発型の発症例はあります。早期からの治療介入が必要です。びまん型ははっきりと脱毛斑がわかる状態ではない症状です。
子供の円形脱毛症の原因
子供の円形脱毛症の原因は完全には解明されていませんが、現在では主に自己免疫疾患によって引き起こされると考えられています。
参考:日本皮膚科学会雑誌 3.小児円形脱毛症診療における皮膚科医の役割
現時点ではストレスや遺伝、さらにアトピー性皮膚炎などが発症のきっかけと考えられています。ですが、いずれも直接的な原因ではないとされています。
つまりストレスがあるから円形脱毛症になるわけではなく、あくまでも引き金の一つになる可能性があるものと考えられています。
円形脱毛症は自己免疫疾患が主な原因
円形脱毛症の最も有力とされている原因は、自己免疫疾患です。本来は病原菌などの外敵から体を守るはずのリンパ球が、何らかの理由で誤作動を起こし、自分の体を攻撃してしまう病気のことをいいます。
円形脱毛症では、成長期の毛包(髪を作る組織)が攻撃を受けて壊されてしまいます。その結果毛包が縮んで休止期のような状態になり、髪が抜け落ちます。
どうして自分のリンパ球が自分の毛包を攻撃してしまうのか、その理由は完全には分かっていません。しかし、リンパ球の攻撃が抑えられれば、元通りの髪が生えてくることが分かっています。
ストレスと円形脱毛症との関係
円形脱毛症といえばストレスが原因というイメージを持つ方が多いです。しかし実際には精神的ストレスが影響を与えるという研究もあるものの程度などは不明とされています。
ストレスがあった後に脱毛が始まる子供もいますが、特にストレスとの関連がなく発症しているケースも少なくありません。子供の場合、入園や入学、転校などで環境が変わったとき、友達関係がうまくいかないとき、家族内でトラブルが起きたときなどに発症することがあります。
また、本人が入院したり手術を受けたり、風邪で高熱を出した後など、体に大きな負担がかかった後にも円形脱毛症になることがあります。
円形脱毛症は誰でもかかる可能性がある病気であり、親や子供が悪いわけではないのです。
遺伝やアトピーと円形脱毛症との関連
円形脱毛症には遺伝的な要素も関係しています。
ガイドラインには中国での調査では円形脱毛症患者の8.4%に家族内発症があったという結果もあります。欧米の調査でも1親等内での発症は一般の10倍でした。一卵性双生児では、2人とも発症する確率が55%と高くなっています。
また、アトピー性皮膚炎や花粉症、気管支喘息などのアトピー性疾患を持つ子供は、円形脱毛症を発症しやすいことも記載されています。アトピー性疾患も免疫の働きが関係しているため、円形脱毛症との共通点があると考えられます。
その他、甲状腺の病気や尋常性白斑を伴う子供もいます。また鉄欠乏性貧血、ビタミンD不足などがあることも報告されています。
円形脱毛症が治るまでの期間と治療法
円形脱毛症が治るまでの期間は、タイプつまり分類型によって大きく異なります。軽症の単発型なら比較的早い改善が期待できますが、重症型では長期の治療が必要になることもあります。
子供に適した治療法を選び、焦らずに続けることが大切です。
種類別の改善期間の目安
ガイドラインではアトピー性疾患などがなく、脱毛している期間が1年以内であれば、1年以内に約80%の患者が毛髪が回復するとされています。
単発型は40%が半年以内に、多発型は27%が1年以内に治癒が見られるという報告もあります。
ただし、欧米の報告では14%~25%が全頭型や汎発型へと移行するという結果もありました。放置すると多発型に移行する可能性もあるため、様子を見ながら必要に応じて治療を開始します。
15歳以下で発症した場合や蛇行型は回復率が低いとされています。子供の場合は症状に注意して早期からの治療を意識したほうがよいでしょう。
治療期間は個人差が大きく、同じタイプでも子供によって経過は異なります。治療を根気よく継続することが肝心になってきます。
子供にできる円形脱毛症の治療法
子供の円形脱毛症には、年齢や症状に応じたさまざまな治療法があります。
【子供の主な治療法】
- ステロイド外用療法
- 紫外線療法
- 局所免疫療法
- 内服療法(抗アレルギー療法)
- ステロイドパルス療法
ステロイド外用療法
ステロイド外用療法は推奨できる治療法の一つです。炎症を抑える効果があるステロイドを、脱毛した部分に1日1〜2回塗ります。
単発型や多発型(脱毛斑の融合がないタイプ)に対して行われ、比較的簡単に始められる治療です。特に12歳までの小児では重症度を問わず推奨されています。
ただし、長期使用では皮膚が萎縮したり血管が拡張したりする副作用が起こる可能性があるため、必ず医師の指示に従って使用します。
紫外線療法
紫外線療法はナローバンドUVB療法やエキシマライト/レーザー療法など、いくつかの種類があります。小児での症例が少なく、長期的な安全性が確立されていないとされているため、効果がない状態で数年間照射を継続しないように注意する必要があります。
局所免疫療法
局所免疫療法は、人工的にかぶれを起こすことで発毛が期待できる治療です。脱毛範囲が広い場合に用いられ、子供にも適用されます。
ただし、かぶれやリンパ節の腫れなどの副作用が生じることがあります。アトピー性皮膚炎がある子供では、一時的に症状が悪化する可能性もあるため、医師と相談しながら十分に注意して治療を進めます。
内服療法
内服療法では、抗アレルギー薬が使われることがあります。アトピー素因のある円形脱毛症の場合には、改善の可能性があるといわれています。
円形脱毛症のみでの使用では保険適用になりません。医師によるアトピー性疾患の診断が必要になります。
ステロイドパルス療法
ステロイドパルス療法(大量のステロイドを短期間点滴する治療)は、再発例が多く安全性も確立していないので子供には行いません。
治療法は症状の程度や年齢によって選択されるため、まずは皮膚科を受診して専門医に相談のうえ治療方法を決定しましょう。
日常生活で気をつけること
治療と並行して、日常生活の見直しも円形脱毛症の改善に役立ちます。
【日常生活で気をつけるポイント】
- 十分な睡眠
- ビタミンB群を含むバランスの良い食事
- 頭皮を清潔に保つ
- 過度なストレスを避ける
十分な睡眠をとることは、髪の成長に欠かせません。睡眠時間が少ないと頭皮の新陳代謝が乱れ、成長ホルモンの分泌も減少します。
就寝時間が遅くなっていく中学生以降もできるだけ早めに寝る習慣をつけていきましょう。
食事面では、バランスの良い食事を心がけましょう。中でもビタミンB群は髪の成長を助ける栄養素としておすすめです。肉類、魚類、卵、乳製品、豆類、緑黄色野菜などに多く含まれています。
また頭皮を清潔に保つことも大切です。シャンプーは優しく行い、強くこすったり爪を立てたりしないようにします。頭皮に刺激を与えすぎると、かえって脱毛を悪化させる可能性があります。
過度なストレスを避けることも重要ですが、ストレスをゼロにすることは現実的ではありません。子供がストレスを溜め込まないよう楽しめる時間を作ったり、好きなことに取り組める環境を整えたりすることで、心の負担を軽くしてあげましょう。
子供が円形脱毛症になったとき親ができるサポート
子供が円形脱毛症になったとき、親のサポートは治療と同じくらい大切です。精神的なケアや周囲との連携を通じて、子供が前向きに治療に取り組める環境を作ることが求められます。
子供への精神的ケアの方法
髪が抜けることは、子供にとって大きなショックです。見た目が変わることで自信を失ったり、学校に行きたくなくなったりすることもあるでしょう。
親としては、子供の気持ちに寄り添いながら、サポートすることが大切です。親が寄り添ってくれる安心感は子供にとって何よりも心強いでしょう。
脱毛部分を隠す方法を一緒に考えることも有効です。髪型を変えたり、ピンで髪を留めたりして脱毛部分を目立たなくできます。脱毛範囲が広い場合は、帽子やバンダナ、子供用のウィッグを使うことも選択肢の一つです。
ただし、ウィッグを使うかどうかは本人の意思を尊重し、嫌がる場合は無理に押し付けないようにします。どのようにしたいのか、親子でじっくり話し合いましょう。
親自身が自分を責めないことも重要です。「育て方が悪かったのではないか」「もっと早く気づいてあげるべきだった」と考えがちですが、円形脱毛症は誰にでも起こりうる病気です。
親が落ち込んでいると、子供もそれを敏感に感じ取ってしまいます。親が一人で抱え込まないようにしてください。
学校や周囲との連携も大切
学校での対応も、子供の円形脱毛症治療には欠かせません。円形脱毛症によるいじめ・からかいが、新たなストレスになってしまうケースもあるためです。
担任の先生には、子供の状況を伝えておきましょう。先生が理解していれば、体育の時間や水泳の授業などでの配慮も相談できます。
クラスメイトへの説明は、子供本人の意思を確認してから行います。本人が話したくない場合は無理に公表する必要はありませんが、理解してもらった方が気持ちが楽になる場合も。
円形脱毛症は病気であり、本人の責任ではないと周囲に理解してもらうことが、いじめやからかいの予防につながります。
スクールカウンセラーや養護教諭とも連携を取り、学校での心のケアに配慮しましょう。子供が悩みを相談できる大人が増えると、精神的な安定に役立ちます。
家族全体で子供を支える体制を作ることも大切です。きょうだいがいる場合は、きょうだいにも状況を説明し、協力してもらいます。家族みんなが温かく見守ることで、子供は安心して治療に専念できます。
子供の円形脱毛症は、適切な治療と周囲のサポートがあれば改善が期待できます。親子や周囲の人と協力して治療に取り組んでいきましょう。