AGA治療には副作用がある?発生する症状や対処法
AGA治療は薄毛の進行を抑え、発毛を促す効果が期待できます。しかし薬ですから使用にあたって副作用が気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
AGA治療には内服薬と外用薬があり、いずれも安全性は確認されていますが、副作用が起こる可能性はあります。
治療を始める前に、どのような副作用が起こりうるのか、副作用が起こった場合の対処法を知っておくことが大切でしょう。
この記事では、AGA治療で起こりうる副作用の種類や発生頻度、対処法について詳しく解説します。副作用を正しく理解し、安心して治療を続けるための参考にしてください。
AGA治療で起こる副作用の種類
日本国内で使用されているAGA治療薬にはいくつかの種類があり、異なる副作用が報告されています。治療で主に使用される内服薬と外用薬では、副作用の現れ方も違います。
まず、どのような副作用があるのか具体的に見ていきましょう。副作用の種類を知っておくと、もし症状が現れた時にも落ち着いて対処できます。
内服薬の副作用と発生頻度
| 内服薬 | 主な副作用 |
|---|---|
| フィナステリド | 性欲減退、勃起不全、肝機能障害、乳房圧痛など |
| デュタステリド | 性機能障害、肝機能障害、女性化乳房など |
AGA治療の内服薬には、フィナステリドとデュタステリドがあります。どちらも男性ホルモンの働きを抑えて抜け毛を防ぐ薬です。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版
フィナステリド
フィナステリドは性欲減退や勃起不全などの副作用があるとされています。
しかし日本国内での臨床試験では374例中、フィナステリド0.2mg/日およびプラセボから1mg/日に移行した患者では性機能に関する副作用は発生しませんでした。
プラセボから1mg/日に移行した患者では胃潰瘍と大腸ポリープが現れましたが、フィナステリドとの因果関係は不明とされています。
また重篤な副作用としては肝機能障害がまれに現れるとされています。
デュタステリド
デュタステリドもフィナステリドと同様の副作用があり、性機能障害の頻度はフィナステリドよりやや高いとされています。
917名を対象とした国際臨床試験では、リビドー減少3.3%、インポテンツ5.4%、射精障害3.3%という結果が出ています。
その他、肝機能障害や女性化乳房なども副作用としてあげられています。診療ガイドラインでは発毛効果に関して高い水準の根拠があるため、内服療法を勧めています。
定期的な血液検査を受けながら服用しましょう。
外用薬の副作用と発生頻度
ミノキシジル外用薬は、頭皮に直接塗布するタイプの治療薬です。血流を改善し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促します。
最も多い副作用は頭皮のかゆみで、炎症、乾燥、ふけ、かぶれなどの皮膚症状が見られることがあります。ミノキシジル5%含有外用薬の副作用発現率は、393名の男性を対象とした試験では6%の人に皮膚症状が出現しました。
症状は、ミノキシジル自体への反応や、製剤に含まれる溶剤へのアレルギー反応が原因と考えられています。肌が弱い方は、使用前に医師に相談するとよいでしょう。
他にも使用上の注意として頭痛やめまい、心拍が早くなるといった症状が現れた場合には副作用の可能性があります。
ミノキシジル使用後に頭皮以外の症状が現れ、継続している場合は速やかに使用を中止し、医師に相談してください。
ミノキシジル内服薬については、診療ガイドラインで内服を行うべきでないとされています。内服薬は降圧剤として開発されましたが、日本では認可されていないためです。
個人輸入でも内服薬を購入する方法はあります。しかし内服薬の有用性に関して臨床試験は実施されていません。
一部のクリニックでは個人輸入の扱いとして医師の判断でミノキシジル内服薬を処方するところもありますが、十分に理解したうえで使用しましょう。
初期脱毛は治療効果の証
AGA治療を始めると、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が起こることがあります。治療開始後10日から1ヶ月程度で始まり、1〜2ヶ月で落ち着くケースが多いです。
初期脱毛は、乱れていたヘアサイクルが正常化する過程で起こります。休止期にあった髪が新しい髪に押し出されることで、一時的に抜け毛が増えるのです。
ガイドラインでも治療初期の休止期脱毛は治療の中止につながるおそれがあるため、医師からの説明が必要とされています。
初期脱毛が起きると不安になるかもしれませんが、治療をやめてしまうと、せっかくの効果が得られなくなります。症状が気になる場合は医師に相談しながら、治療を継続することが大切です。
初期脱毛の程度には個人差があり、まったく起こらない方もいれば、明確に感じる方もいます。過度に心配せず治療を継続していきましょう。
AGA治療薬でなぜ副作用が起こる?
AGA治療薬によって副作用が起こる理由を理解しておくと、症状が出た時にも適切に対処できます。また治療前の不安の軽減にもつながるでしょう。
薬が体にどのように作用するのか、なぜ副作用に個人差が生じるのかを見ていきましょう。
薬が体に作用する仕組み
フィナステリドやデュタステリドは、5α還元酵素の働きを抑える薬です。この酵素は男性ホルモンのテストステロンを、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換します。
DHTが毛包に作用すると、髪の成長期が短くなり、薄毛が進行するのです。薬はDHTの生成を抑えて、ヘアサイクルを正常化する作用が期待できるものです。薬の効果には個人差があるため、すべての方が治療によって薄毛が解消できるわけではありません。
薬剤は男性ホルモンのバランスに影響を与えるため、性機能への副作用が起こる可能性があります。
ミノキシジルは血管を拡張し、血流を改善する薬です。毛乳頭細胞への栄養供給が増え、発毛因子の産生も促進されます。ただし、血管拡張作用は全身に及ぶため、頭痛やめまい、動悸といった症状が出ることがあるのです。
内服薬は肝臓で代謝されるため、肝臓に負担がかかります。そのため、どの薬でも肝機能障害のリスクはゼロではありません。定期的な血液検査で肝機能をチェックすることが重要です。
副作用で個人差が生じる理由
副作用の出方には大きな個人差があります。同じ薬を同じ用量で服用しても、まったく副作用が出ない方もいれば、何らかの症状を感じる方もいるのです。
体質や年齢、健康状態によって、薬の代謝速度や感受性は異なります。肝機能や腎機能が低下している方は、薬が体内に長く留まりやすく、副作用のリスクが高まる可能性があります。
また、既往症や服用中の他の薬との相互作用も影響します。高血圧や心疾患がある方、降圧剤を服用している方は、ミノキシジルの血管拡張作用により症状が悪化する恐れがあるでしょう。
精神面の副作用については、ホルモンバランスの変化だけでなく、心理的な要因も関係していると考えられます。副作用への不安が強いと、実際に症状を感じやすくなることもあるのです。
このような個人差があるため、AGA治療は医師の診察を受けながら進めましょう。自分の体質や健康状態に合わせた治療を受け、副作用のリスクを最小限に抑えてください。
副作用が出た時の対処法
もし副作用が現れた場合、適切に対処すれば治療を安全に続けられる可能性が高まります。まずはどういった症状が出ているのか、どれくらいの期間継続しているのかを確かめてください。
早めに医師に相談し、症状に応じた対応を取ることが重要です。
すぐに医師へ相談する
副作用を感じたら、まず医師に連絡してください。軽い症状であっても、自己判断で放置するのはやめましょう。
以下の症状が続く場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 性機能に関する症状
- 頭痛、めまい、動悸
- むくみ、体のだるさ
- 胸の痛みや息切れ
皮膚症状についても、かゆみや赤み、かぶれがひどい場合は使用を中断してください。軽度の症状であれば、使用量を減らしたり、使用頻度を調整したりすることで改善する場合もあります。
医師に相談する際は、いつから症状が出たのか、どのような症状なのか、日常生活にどの程度影響しているのかを具体的に伝えましょう。正確な情報があれば、医師も適切な対処法を提案しやすくなります。
多くの副作用は、薬の使用を中止すれば数週間から数ヶ月で回復します。ただし、症状によっては専門的な治療が必要な場合もあるため、必ず医療機関を受診してください。
薬の変更や量の調整
副作用が出た場合、薬の種類を変更したり、用量を調整したりすることで改善できることがあります。
フィナステリドで副作用が出た方は、デュタステリドに変更すると症状が治まることもあれば、逆に副作用が強まることもあります。また、フィナステリドの用量を減らすことで、効果を維持しながら副作用を軽減できる場合もあるでしょう。
ミノキシジル外用薬は頭皮に直接塗布するため、全身への影響が少なく、副作用のリスクも低くなるとされています。
ミノキシジルの濃度を下げることも有効です。5%の外用薬で皮膚症状が出た場合、1%に変更すると症状が改善することがあります。
薬の変更や調整は、必ず医師の指示のもとで行ってください。自己判断で量を増減したり、複数の薬を併用したりすると、かえって危険な場合があります。
性機能障害が気になる場合は、医師に相談のうえでED治療薬を併用するという選択肢もあります。AGA治療と並行してED治療が可能であると診断されれば、副作用の影響を軽減しながら治療を継続できるでしょう。
定期的な健康チェック
AGA治療を安全に続けるには、定期的な健康チェックが欠かせません。
治療開始前には、血液検査を推奨しているクリニックは多いです。肝機能や腎機能の状態を確認し、治療薬が使用できるかどうかを判断します。既往症や服用中の薬についても、正確に医師に伝えることが大切です。
治療開始後も、定期的に血液検査を受けましょう。6ヶ月に一度程度の頻度で血液検査を受けるのが理想的です。
肝機能の数値に異常がないか、他の健康指標に変化はないかをチェックしておくと、副作用の早期発見につながります。
診察時には、体調の変化を医師に報告しましょう。些細な変化でも、重要な情報になることがあります。不安なことがあれば、遠慮せずに質問してください。
専門クリニックでは、健康管理を含めた総合的なサポートを受けられます。
AGA治療薬で起こる副作用を抑えるための予防策
副作用を完全に防ぐことはできませんが、リスクを最小限に抑えることは可能です。正しい使用方法と生活習慣の改善が、安全な治療につながります。
また生活習慣の見直しは薄毛対策としても取り入れたいものです。毎日の生活で少しずつ無理なく改善していきましょう。
AGA治療薬の正しい用法用量を守る
AGA治療薬の効果を最大限に引き出し、副作用を抑えるには、正しい用法用量を守ることが何より大切です。
フィナステリドやデュタステリドは1日1回の服用です。決まった時間に飲むことで、体内の薬の濃度を一定に保てます。
飲み忘れた場合でも、2回分を一度に服用してはいけません。気づいた時に1回分を飲み、次の服用時間が近ければ1回飛ばしてください。
ミノキシジル外用薬は1日2回、朝と夜に塗布します。多く塗れば効果が高まるわけではなく、かえって副作用のリスクが増すだけです。定められた用量を守り、頭皮以外の部分に薬がつかないよう注意しましょう。
薬を勝手に増量したり、複数の薬を自己判断で併用したりすることは絶対に避けてください。効果を急ぐ気持ちはわかりますが、副作用のリスクを高めるだけで、治療の成功にはつながりません。
また、アルコールとの併用にも注意が必要です。特にミノキシジルは血圧を下げる作用があるため、飲酒時の使用は控えたほうが安全でしょう。
個人輸入で入手した薬の使用も推奨できません。品質や安全性が保証されておらず、偽造品の可能性もあります。万が一健康被害が出ても、公的な救済制度の対象にならないため、必ず医療機関で処方された薬を使用してください。
生活習慣を整える
AGA治療の効果を高め、副作用を軽減するには、生活習慣の改善も重要です。
【生活習慣のポイント】
- 7時間程度の睡眠時間
- 食事の栄養バランスを整える
- 適度な運動
- ストレス管理
- 頭皮を清潔に保つ
十分な睡眠で、ホルモンバランスが整い、頭皮環境も改善されます。毎日7時間程度の睡眠を心がけましょう。睡眠不足はストレスを増やし、薄毛の進行を早める要因にもなります。
バランスの取れた食事も大切です。タンパク質、ビタミン、ミネラルをしっかり摂取しましょう。髪の成長に必要な栄養が供給されます。
特に亜鉛、ビタミンB群、ビタミンEは、髪の健康維持に役立つとされているので積極的に摂りたい栄養素です。厚生労働省の食事摂取基準などを参考に、足りないものを意識的に食事に取り入れていきましょう。
適度な運動は血行を促進し、ストレス解消にもなります。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけてください。
ただし、運動習慣がない方が突然激しい運動を行うと体に負担をかけるため、避けたほうがよいでしょう。
ストレス管理も忘れてはいけません。過度なストレスはホルモンバランスを乱し、AGAの進行を促進する可能性があります。趣味の時間を持ったり、リラックスできる環境を作ったりして、ストレスを適切に発散しましょう。
タバコは血行を悪化させ、髪の成長を妨げます。喫煙している方は、禁煙を検討してください。禁煙は健康全般にも良い影響を与えます。
頭皮を清潔に保つことも重要です。適切なシャンプーで頭皮の汚れや皮脂を落とし、清潔な状態を維持しましょう。ただし、洗いすぎは逆効果なので、1日1回にしておきます。
生活習慣の改善は、AGA治療の効果を補完し、副作用のリスクを下げることにつながります。薬物療法と合わせて、総合的なケアを心がけてください。